BtoBシステム販売で「営業力」より先に設計すべきもの 第2回:製造工場の見込み客と「ちゃんと出会う」チャネル戦略

前回は、「誰のどんな悩みを解決するのか」と「ユースケース」を設計することについて書きました。

第2回のテーマは、その内容を”ちゃんと届かせるためのチャネル設計”です。
即ち「見込み客との出会い方を、バラバラな施策ではなく”連携する仕組み”として設計する」です。

BtoBで製造工場にシステムを販売する場合、見込み客との出会い方はだいたい次の3つに集約されます。
1.Web・検索を起点にしたデジタルチャネル
2.展示会やセミナーなどのオフラインチャネル
3.既存顧客やパートナーからの紹介チャネル

大事なのは、この3つを「とりあえず全部やる」ことではなく、
「それぞれにどんな役割を持たせるか?」
を最初から決めておくことです。

1. デジタルチャネル:検索と専門コンテンツで”静かなリード”を拾う

製造業の方も、いまや当たり前のようにGoogleで検索します。
とはいえ「生産管理 システム 比較」と打つ人ばかりではありません。

むしろ、

– 「不良率 削減 製造業」
– 「段取り替え 工数 削減」
– 「トレーサビリティ やり方」
– 「工場DX 何から」

といった“悩みベース”のキーワードで調べているケースが案外多いものです。

ここで前回の「誰のどんな悩みを解決するか」が効いてきます。
ペルソナの悩みをそのままタイトルにしたブログ記事やホワイトペーパーを用意しておくと、
「静かに困っている工場長」と自然に出会えるようになるのでは。

ポイントは2つです
1. 機能説明より「構造の説明」を重視
– 「なぜこの問題が起きるのか」を丁寧に説明することで、読み手の理解が深まります
2. 最後にそっと「解決のアプローチとしてのシステム」を紹介する
– いきなり売り込むのではなく、自然な流れで解決策の一つとして提示します

いきなり「製品カタログ」ではなく、
「課題の言語化(meaningful)→原因の整理→解決の方向性(praxis)」とステップを用意してあげるイメージです。

2. オフラインチャネル:展示会で”名刺の山”を作らない

製造業向けビジネスでは、いまも展示会や業界セミナーが重要な接点です。
ただし、ここでありがちな失敗は、
「名刺は大量に集まったが、その後まったく案件化しない」
というパターンです。

展示会は、「一気にたくさんの人と会える場」ではなく、
「その後の会話の口実を作る場」と捉え直した方が成果が出やすくなります。

例えばこんな設計です
事前
– 「◯◯な工場長のためのミニセミナー」を事前告知
– 事前申込者には、当日配布資料の一部PDFをメールで送っておく

当日
– ブースでは“全部見せる”のではなく、数パターンの来場者を想定して「3分で分かる事例スライド」を用意

事後
– 名刺を”業種×関心テーマ”でざっくり分類し、
1〜2週間以内に事例紹介や簡易診断の案内を送る
こうしておくと、展示会後のフォローが「とりあえず一斉メール」ではなく、
“話の続き”としてのコミュニケーションに変わります。

 

3. 紹介チャネル:既存顧客とパートナーを”社員以上の営業チーム”にする

製造業では、既存顧客や装置メーカー・商社からの紹介が非常に強力です。
紹介が生まれない会社の多くは、「紹介してください」と言っていないか、お願いの仕方が「ふんわり」していることが多いです。

具体的な伝え方の例

既存ユーザー工場長へ
「もし、◯◯な課題で困っている工場さんがあれば、ご紹介いただけませんか」
“課題ベース”で紹介シーンをイメージしてもらう

装置メーカー・商社へ
「御社のこの設備を入れている先で、データ活用に困っている工場に一緒に提案しませんか」
と、自社システムが”設備価値を高める存在”であることを打ち出す

紹介が発生しやすいのは、
「誰に・どんな時に・どんな一言で」紹介してもらえばいいかを相手がイメージできたときです。

4. チャネルは”足し算”ではなく”役割分担”

最後に、チャネル設計の考え方を一言でまとめると、
– Webは”気づき”と”検索時の出会い”
– 展示会は”対面での信頼のきっかけ”
– 紹介は”案件化とクロージングの近道”
という役割分担です。

何でもかんでもWebで完結させようとするのではなく、
製造業ならではの「対面の安心感」や「紹介の重み」を前提に、
お客様のパターンごとに”何を期待するのか”を先に決めておくことが重要です。

第2回まとめと、第3回への予告

今回は、

– 製造工場向けシステムの見込み客と出会う3つのチャネル
– デジタル・オフライン・紹介それぞれの役割
– 展示会や紹介を”偶然”ではなく”設計された仕組み”に変える考え方
について書きました。

次回の第3回では、いよいよ
「チャネルから入ってきたリードを、どうやって案件・受注までつなげるか?」
というテーマで、コンテンツ設計と営業プロセスの一体化について書きます。

マーケティングと営業の分断を埋め、
「現場の温度」を落とさずに
社内決裁まで運ぶための実務的なヒントをまとめようと思います。

 

想いの強さを、確かな「信頼」の構造へ。

Articulating your passion, creating your success.

       

ミーニングフル・プラクシス

       

高橋 尚文

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